「異文化交流」と「十字架の女」。
この組み合わせに気づいたのは妻の一言だった。
「不法外国人が増えたらあの小説のようなことが起きるのかも」
宗教内部では忌避されるようなテーマであるレイプ事件で書き始められ、
一部女性信者からは「信じられない」という声も上がっていた。
あれから四年。いつしか政府主導で外国人労働者を導入する時代になった。
偶然の一致か、「緊急避妊薬」が薬局で買えるよう法改正するという。
そんな世紀末の様相を呈してきた社会のなかで、
「ではあなた自身は信仰者としてどうするのか」
そんな問いかけがこの小説の行間から響いてくるような気もする。
気がつけば「無事で何より」が通用しない社会の真っただ中にいる。
そういった「覚悟を持て」ということかもしれない。
いま読み返すと、発刊から四年間の社会情勢の変化と自分の悟りの変化、
そのあたりを整理し対策を考えるための格好の「経典」なのかもしれない。